古着リサイクルで”エコ”を実現! サステナブルで新しい製造のカタチ

2025.06.17 8
Z世代を中心に、現在は「第二次古着ブーム」ともいわれるなど、世代を越えて根強い人気のある古着ファッション。しかし、売れ残ってしまった古着の多くは、再利用されず廃棄されてしまっていることを知っていますか?これまでは、大量生産・大量消費の流れがあり、ブームが去れば廃棄されるのが当たり前。しかし、国連が掲げるSDGsなどをきっかけに、”生産と消費の時代”から、”地球環境をみんなで守る時代”へと、今、少しずつ社会が変化しつつあります。 
 
古着リサイクルに関するエコな取り組みで言えば、身近なところだとUNIQLO(株式会社ファーストリテイリング)やナイキ、H&Mなどが実施している、古着を回収する取り組みなどが有名です。皆さんももしかすると、一度は利用したことがあるのではないでしょうか? 
 
本記事では「多くの古着をリサイクルして、また新たな製品として再生する」そんな事業をスタートした製造会社の取組み事例をベースに、古着リサイクル事業の可能性を探ります。 
 

今回私たちが伺ったのは……  
【株式会社エフアンドエイノンウーブンズ】(本社所在地:大阪府大阪市中央区)  
 
株式会社エフアンドエイノンウーブンズ(通称:FANS)は、2023年12月株式会社フジコ-とアンビック株式会社が統合して誕生した企業です。日本有数の毛織物メーカーであるニッケグループの一社として、不織布・フェルトの製造を手がける同社。これまで100年以上受け継がれた技術力は非常に高く、世界のさまざまな場面で同社の製品が活用されています。 


つくる責任、つかう責任

  

持続可能な消費と生産を確保するための、SDGs12番目の目標である「つくる責任・つかう責任」。SDGsとは「国連が定めた2030年までに達成すべき、地球上のさまざまな課題を解決するための世界共通の17の目標」のことです。”持続可能な消費と生産を構築するための目標”である「つくる責任・つかう責任」の達成を目指し、古着リサイクル事業に力を入れているのが、今回ご紹介する株式会社エフアンドエイノンウーブンズ(通称:FANS)です。 
 

日本の古着リサイクルは世界に遅れを取っていて、実は推計でも古着の総量の60%以上にあたる、なんと73.1万トンもの古着が廃棄されている現状があります。廃棄の一番の問題点は、埋め立てや焼却処理が必要なこと。特に焼却の際に発生する二酸化炭素は環境への負荷が大きく、世界的にも解決を求められている状況です。また、新たな衣服の製造に多くの資源やエネルギーが必要なことも、ファッション業界のこれまでの慣習を見直すきっかけにもなっています。 


さまざまな企業で進む、古着リサイクルの波

 

SDGsを中心とした地球環境保護のムーブメントが広がったことで、さまざまな企業で古着リサイクルの取り組みが開始されています。例えば、皆さんにも身近な無印良品では、下着を除く商品全品を対象に古着の回収を実施。提供した古着と引き換えに、同社のポイントを付与する取り組みを実施しています。またH&Mでは、自社商品以外のブランドも対象とした古着回収を実施。所定の規定に沿って店頭の回収ボックスに古着を入れると、デジタルクーポンの付与などを受けることが可能です。 
 
各社が古着回収を実施するなかFANSも、衣料繊維大手である親会社のニッケが販売する衣料品の回収を実施。それを起点として、古着リサイクル事業を展開しています。本事業を推進するFANSの松本本部長は、「当社の古着リサイクル事業は、2022〜2023年頃にスタートしました。衣料のリサイクルは日本が世界に比べて遅れている領域のひとつ。私たちは衣料品製造を行う親会社であるニッケとの繋がりを軸に、古着の回収~加工・再製品化までを展開する循環型の環境ビジネスモデルの実現を目指しています。」と語ります。世界的メーカーであるニッケの製品の回収をベースに、自社で加工・再製品化までを行えることが同社の大きな強み。しかし、本事業の推進には、事業化のネックになる問題もあったようです。 


ボタンやファスナーがリサイクルの壁に! 


「古着リサイクルでネックとなるのが、服についているボタンやファスナーです。これらを外す作業はこれまでは手作業で行われることが一般的でした。作業によるコストが大きくなることで、多くの企業では事業化できなかった経緯があります。」(松本本部長)古着リサイクルの事業化を計画する企業の多くを悩ませるこの問題。同社は海外製のリサイクル機械の導入によって、課題を解決に導きます。 
 
「当社では、ボタンなどの除去から衣料の加工までができる機械を、国内でいち早く導入しました。それをきっかけに、親会社であるニッケと一体となった循環型製造サイクルを実現できたと感じます。この大きな循環のサイクルこそが、ニッケグループの強みです。」(松本本部長)現在はニッケグループの事業3本柱のひとつが、この古着リサイクル事業。機械の導入や取り組む姿勢からも、ニッケグループの本気度を伺い知ることができます。 


可能性が広がる、古着リサイクル事業 


このような古着リサイクル事業が注目される背景には、リサイクル製品に対する社会の捉え方の変化があります。FANS近藤社長も「リサイクル事業に注力ができるのは、社会の価値観が以前に比べ大きく変わってきたからでもあります。これまでのリサイクル製品は消費者に受け入れられにくく、需要も非常に少ないカテゴリーだった。しかし、環境に配慮した製品が企業のイメージ向上に繋がるなど、受け入れられやすい土壌ができてきた。私たちもしっかりと価値を認めて貰えるものを作り、これからの事業の柱にしていきたい」と語ります。 
 
リサイクル製品に対する社会全体の意識が変わり、ニーズが高まりつつある昨今。すでに空間づくりを重視する自動車メーカーなどの内装や、一般向けのスタイリッシュな鞄など、同社のリサイクル製品はすでに幅広い用途で活用され始めています。同社の古着リサイクルは、環境や社会に対する貢献が結果として新しい事業の柱となっている、非常に現代らしい好事例です。今後はリサイクル素材の静音性を活かした、仮設住宅への活用も模索中とのこと。サステナブルで地球環境にも優しい古着リサイクル事業は、さらなる社会貢献が期待される、今後注目の事業領域のひとつです。