全 ホテルオークラ福岡の調理場には、ホテルオークラ東京開業当時の総料理長・小野正吉氏の言葉が掲げられています。これは単なる言葉ではなく、同ホテルに脈々と受け継がれる料理の精神。今回は前ホテルオークラ福岡の谷内雅夫総料理長に、料理の心についてお話を伺いました。
調理部門のフィロソフィー(理念)について
これはもう「料理は心」この一言につきます。いろんな意味で心のこもった料理であるためには、仕込みの時点から心を込めないといけない。人参の皮をむくときも、見た目や厚みに気を配り、単なる作業にしないこと。これは料理だけでなく、すべての仕事に言えることだと思います。
料理人としての原点について
25歳の時、社内制度を利用してオランダのホテルオークラに修業に行きました。そのときお世話になったシェフに「フランス料理とは何か」を徹して教えていただいたことが、今の私の礎になっています。中でも深く根付いているのは「素材が主役だ」というシェフの口癖。おいしい料理は食材との対話から生まれることを教わりました。
たとえば、肉を焼くときは、どのタイミングでひっくり返せばよいかを肉に問いかけるんです。 今か?まだか? 肉は答えてくれないけれども、そうしているうちにいろんなことがわかるようになる。ただ漠然とこなすだけではだめですよ。気持ちを入れながら経験を積むことが大切です。
美味しい料理に辿り着くために
「食材が主役」ですから、食材選びには常にアンテナを張り巡らせています。同じ金額でいかにクオリティの高いものを仕入れるか。食材さがしをおざなりにして、おいしい料理は作れません。私も商談会に出向いて生産者とつながるなど、良いものに出会うために行動しています。ひと手間、ふた手間かけた先に、おいしい食材・美味しい料理との出会いがあるのです。いつも尽力して下さる生産者のみなさんには本当に感謝しています。
料理人を目指す人たちへ
まずは日々の仕事に真剣に向き合い、覚える努力、忘れない努力をしていきましょう。続けていけば先輩や上司から信頼され、次のステップに進むことができます。楽しさを味わうには、一生懸命やらないとね。環境に甘えず、自分で自分を鼓舞する強さ、成長しようという発条(バネ)を持っていただきたいと思います。
ホテルオークラ福岡は今年で25周年。私もまだまだ、より良くの変化に向けて、日々動いています。数年前からYouTube番組をはじめましたし、お客様からのリクエストを受けて、メニュー構成から調理・料理提供まですべて私自身が担当するプライベートレストラン「マサオズルーム」も不定期開催しています。若い料理人からよい刺激をいただきながら、私も進化を続けていく所存です。
みなさんの活躍にも、大いに期待しています。