「後輩が成長していく姿を見ることが、何よりのモチベーションになります」 柔和な笑顔でそう語るのは、2024年6月にホテルオークラ福岡の取締役総料理長に就任した西本裕治氏。
今回は、ホテルオークラ東京を経て福岡の地に根を下ろし、料理人としての道を切り拓いてきた西本氏に、未来の料理人へ向けたメッセージを語っていただきました。
◆ プロフィール ◆ 株式会社ホテルオークラ福岡 取締役総料理長
西本裕治(にしもとゆうじ)氏
長崎県出身。1984年ホテルオークラ東京入社。調理部で宴会調理、レストランの洋食調理部門を担当。1999 年ホテルオークラ福岡へ転籍し、レストラン部門のシェフとしてホテルオークラ伝統の味を福岡へ継承する。2012年にホテルオークラ JR ハウステンボスへ出向し、2014年に総料理長、2016年に取締役総料理長、2018年にホテルオークラ福岡へ帰任後、調理部長を経て、2024年6月ホテルオークラ福岡 取締役総料理長に就任。
1. 料理の道に進んだきっかけ 「最初から料理人に強い憧れがあったわけではないんです。父が長崎で小さな飲食店を営んでいて、自然と料理の世界に触れる機会がありました。手伝いながら、“こういう道もあるのかな”と思ったのがきっかけですね。
高校卒業後、料理を学ぶなら東京だろうと考え、ホテルオークラ東京に入社しました。寮生活も懐かしいですね。寮から職場まで片道1時間半。始発で出勤して、遅くまで働く日々でしたが、若かったから乗り切れたのだと思います。そんな環境で、仲間や先輩に恵まれながら、仕事の厳しさと面白さを学んでいきました」
2. 東京での修行時代 「最初の配属は宴会部門で、二年目に迎賓館『三菱開東閣』に異動し4年ほど経験を積みました。その後オークラ東京に戻り、コンチネンタル料理を提供するレストラン『オーキッド』で8年間勤務。当時は定期的に、海外から各国のシェフを招聘してイベントをしていたんです。刺激の多い環境で、料理人としての視野が大きく広がった時期でした。
私自身、最初から夢や目標があったわけではなく、“もっと学ぼう”という気持ちが生まれてきたのは、この道に入ってからのこと。性格的にも一人で突き進むより、仲間と一緒に楽しくやるのが好きでした。海外に行くチャンスもありましたが、そのときは“ここでも十分に腕を磨ける”と思っていました。今になってみると、行っても良かったかな?とも思いますが、何より仲間や先輩に恵まれたからこそ、続けてくることができたと感謝しています」
3. 退路を断って福岡へ 新たな環境での挑戦 「1999年、ホテルオークラ福岡の開業を機に、九州へ戻ることを決意しました。東京で15年働き、そろそろ新しい挑戦をしたいと思っていたんです。ところが東京からの出向者枠が埋まっていたため、やむなくホテルオークラ東京を退職。新たにできた㈱ホテルオークラ福岡へ転籍し、一からスタートを切ることになりました。
驚いたのは、ホテルオークラ福岡に入社したとたん、シェフを任されたことです。前職の東京では主任、ホット場の一スタッフだったので、管理者としてチームをまとめるのは初めての経験でした。若手スタッフが中心のチームをゼロから作り上げる苦労はありながらも、みんなでトライアンドエラーを繰り返してオープンを迎え、軌道に乗せたときの達成感は大きかったです。
もうひとつの転機は、福岡に来て10年ほど経った頃、技術応援の提携で6年半ハウステンボスに出向したことです。知らない環境で孤軍奮闘、はじめは受け入れてもらえないこともありましたが、料理人同士だからこそ愚直に美味しいものを追求し、お客様に喜ばれる料理を提供すれば、人はついてきてくれることを学びました」
4. シェフとしての信念 美味しさとは何か? 「料理人にとって、一番大事なのは“美味しいものを作ること”です。ただ味が良いだけでは不十分。盛り付けや色合いなどの美しさ、提供のタイミング、温度など、すべてが揃って初めて“美味しい”と言えます。お客様の期待値も年々高くなっているので、常に学び研鑽する姿勢は欠かせません。
また、料理に必要なのは、相手への思いやり。最近はアレルギー対応や食の多様化も進み、料理人に求められる視点が広がっています。日頃からスタッフには、挨拶や返事、身だしなみ、チームワークの重要性を伝えていますが、思いやりの基本を大切にすることは、すべて美味しい料理を作ることに繋がると思っています」
5. ビジョンと未来の仲間へのメッセージ 「今の目標は、次世代の育成です。総料理長になってからは、若手だけでなく中堅スタッフのモチベーション向上にも力を入れ、管理職のユニフォームを一新しました。セクションごとに違いはありますが、世代交代が徐々に進み、若手が意見を出しやすい環境になってきていると感じています。今後も、スタッフが伸び伸びと活躍できる組織をつくり、より良いチームを育てていきたいと思います。
私がずっと大切にしている言葉に“継続は力なり”があります。もう少し頑張れば次のステージに行ける、というところで辞めてしまうのは、とてももったいないこと。迷ったらぜひ相談してください。一緒に前に進む道を見つけられるよう、力になりたいと思っています。
福岡のような地方都市は東京ほどの規模感はありませんが、上を目指しやすく、若いうちから活躍できるチャンスに溢れています。福岡の地で、一緒に成長していける仲間を待っています」
☆☆採用担当者のコメント☆☆
歴代の総料理長の中で、ホテルオークラ福岡の創業から地道に経験を積み、総料理長に就任したのは西本ただ一人。現場を深く理解し、後輩を思いやる人柄が魅力の、人間味あふれるリーダーです。インターンシップの受け入れにも積極的で、多い時はキッチンが人で溢れるほど。実際の職場の雰囲気を肌で感じられる機会なので、ぜひエントリーしてみてください!