気取らない京都の名物料理 変わりゆく時代とともに歩む「わらじや」の物語

2025.04.13 0
京都・七条、三十三間堂のほとりに店を構える「わらじや」は、“うなべ”(うなぎ鍋)と“うぞふすい”(うなぎの雑炊)の専門店です。長きにわたりたくさんのお客様をお迎えし、心に残るひとときをお届けできるよう努めてまいりました。今回は、時代の流れに合わせて少しずつ姿を変えてきた、私たちの歩みと今の「わらじや」についてご紹介いたします。

 

気取らずに味わう「うなぎ料理」を考案


「わらじや」という名の由来は、豊臣秀吉公が「方広寺」に参拝する際、私どもの店で草鞋(わらじ)を脱いで休まれていたことにさかのぼります。当時、店は「紀伊国屋」という名で、茶店として商いをしていたと伝えられています。
 
その後、時代の変化と共に、旅籠、茶屋、会席料理店と形を変えてまいりましたが、戦後の食糧難の時代(昭和26年頃)、当時の店主がうなぎのぶつ切りを使った雑炊「うぞふすい」を考案。以来「わらじや」は、“うなべ”と“うぞふすい”の専門店として、技術と心を受け継ぎながら現在に至っています。

 
なお、1960年代にはすでにクレジットカード決済を導入していた記録があり、当時としては非常にハイカラで、時代の流れに敏感な店であったようです。
 
 

一種類の「お決まり」から広がった多彩なスタイル


三年ほど前まで、私たちの提供する料理は、鰻の鍋と雑炊のみの「お決まり」一本でした。鍋は二人前からの提供であったため、店の前でお一人のお客様同士が声をかけ合って、席をともにする光景も珍しくありませんでした。
 
時代とともに変わるお客様のニーズに対応し、現在では一人前の鍋や、抹茶から始まる茶懐石の流れを踏襲したコース、白焼きやうな丼を楽しめるメニューなど、多彩なスタイルでうなぎ料理をご提供しています。
 

コロナ禍以降は、もともとまかない料理として職人が考案した「まむし巻き」が、お持ち帰り商品として誕生。メディアでも紹介されるなど、当店の新たな看板メニューのひとつとなっています。
 
 

和食の基本を学び、成長できる場所として


「わらじや」では、国内外で幅広い経験を積んだ料理長のもと、専門店としての料理の技法に加え、確かな和食の基本技術を身につけることができます。また、社員やアルバイトという垣根なく、「やってみたい」という技術の習得やチャレンジを応援。コースの前菜などで、四季折々の素材を取り入れた一品を組み立てるなど、料理人としての創意工夫を発揮できる場面も少なくありません。

「わらじや」らしさである、柔軟に変化を続ける風土を受け継ぎ、若い料理人のみなさんが伸び伸びと活躍できるよう、今後も学びの環境を整えていきたいと思っています。
 

変わらない味と記憶と共に、新しい価値をお客様に届けするために、私たちはこれからも挑戦を重ねていきます。そんな私たちの姿に共感してくださる方と、未来の「わらじや」を築いていけることを楽しみにしています。