もし水門がなかったら、私たちの身の回りの環境はどうなるでしょうか?
・大雨や津波で水があふれてしまう。
・ 農地に水があふれ作物が育たない。
・上下水処理がうまくできず安全な水が確保できない。
・泥砂が逆流し、水路が詰まってしまう。
…など、多くの被害が予想されます。
このように浸水や土砂災害などの水害から、私たちの暮らしを守る重要な役割を果たしているのが「水門」です。水門は、洪水や津波などの水害を防ぐだけでなく、農業や工業用水の管理にも活用されており、社会に欠かせないインフラのひとつです。ここでは、斉藤鐵工所の事例から水門の仕組みや役割、防災との関係、さらには将来の展望までを詳しく解説します !
水門って何?基本的な役割と設置までの流れ
水門は、河川や港湾などの水を止めたり流したりと水位を調整し、洪水や高潮から人々の生活を守るために設置されます。近年は気候変動による豪雨の増加や津波対策として、その重要性がますます高まっています。
水門は、役所などの公的機関に入札し、用途に応じて設計され、製造し社内検査、客先検査、立ち合い、施工という流れで設置されていきます。長期間にわたり安全に機能するよう、定期的な点検やメンテナンスが必要です。専門の技術者が設備の点検・修理を行い、万が一の故障や劣化を未然に防ぐことで、社会の安全を支えています。
水門(ゲート)の種類と役割
水門には、河川用、海岸用、ダム用、農地用などさまざまな種類があり、それぞれの役割が異なります。
いくつか例を挙げましょう。
・スライドゲート
上下に門が可動し、水流を止める役割があります。農業用、上下水用、河川用、防潮用とさまざまな用途があります。
・横引きゲート
こちらは左右にゲートが動きます。通常車などが運航するところに、高潮時浸水することのないように扉を閉めます。
・垂直可動式上水壁
油圧シリンダーでゲートを押し上げて浸水を防ぎます。2020年、京都・嵐山の桂川で行われた治水事業では、嵐山の景観や眺望への配慮が必要だったことから、大雨等での川の氾濫を防ぐためにこのゲートを設置しました。
このように役割や設置環境によって、さまざまな水門があります。これに加え、自動化・遠隔化といった操作も多様になっています。
防災に役立つ水門
2011年の東日本大震災をきっかけに、防災への意識が強まりました。水門に関しては、日立造船株式会社(カナデビア株式会社)が陸上設置型フラップゲート式防潮堤「neoRiSe®」を開発。無動力かつ人の操作を必要としない水門を設置し、有事の際に人的被害を最小に抑える製品が生まれました。斉藤鐵工所では、2015年から「neoRiSe®」のライセンス契約を締結し製造・施工を請け負い、防災への事業を強化しています。また、近年では除塵機の製造にも力を入れています。除塵機で、流れてくるペットボトルや木くずなどのゴミを掻き揚げ除去することで、地域の浸水被害を抑える役割を果たしています。
水門の未来
近年では、自動化や遠隔化といった技術を活用した水門の開発が進み、よりスピーディーでより安全性の高い操作が可能になっています。ですが、まだすべてに浸透しているわけではなく、全国的な広がりはこれから本格的に設置されていくことでしょう。水に囲まれた島国で、自然災害が多い日本では、水門のニーズはますます高まっていくことが予想されます。水門、そしてそれを製造する水門メーカに対しては大きな期待が寄せられます。今後も社会インフラとして重要な役割を果たし続けるでしょう。