近年、全国の住みたい街ランキングで、常に上位に位置している福岡市。
街を歩くとあちらこちらで、建設中のマンション工事現場に出会います。
今回は、“まちの骨格”をつくり上げている地場の建設会社「成和建設株式会社」にお伺いして、マンション建築の特徴や、福岡の街づくりを担う現場の実情などについて教えていただきました。
お話を伺ったのは……
【成和建設株式会社】本社:福岡市
新築マンションを中心に、あらゆる建造物を手掛ける地場の総合建設会社。顧客のニーズに寄り添い、要望に応えながら、お客様と共に創りあげる建設を大切にしています。
井上副社長:建築一筋。豊富な経験と人柄で、現場・顧客すべてに安心をもたらす名バイプレイヤー。
建設一本で勝負する、街づくりのプロ集団
(以下、副社長談)
当社は2001年の創業以来、建設一本でやってきました。いろいろな事業の可能性も検討したことはありますが、やはり本業に集中することが一番だと考えています。
現在、施工実績の大半はマンションの新築工事です。分譲・賃貸を問わず大手ディベロッパーとの取引がほとんどですが、ご依頼いただく案件すべてはお引き受けできない状況が続いています。数をこなすのではなく、品質を守る。目の前の案件に丁寧に向き合う姿勢こそが、信頼の基盤になっていると感じています。
分譲と賃貸、それぞれの現場の特徴
マンションと言っても、分譲と賃貸では、工事の進め方が大きく異なります。いずれの場合も、住む人の暮らしを想像しながら丁寧につくるという姿勢は変わりませんが、賃貸マンションでは、基本的に全戸の仕様が統一されており、設計図どおりに効率よく仕上げていくスピードと正確さが求められる傾向があります。
一方で分譲マンションでは、購入者の希望に応じて内装仕様の調整を行うことが多く、一戸一戸に個別対応が必要です。「このシステムキッチンにしたい」「この壁を抜いて広くしたい」など希望はさまざまで、カタログにない仕様を持ち込まれることも。大変と言えば大変ですが、さまざまな空間づくりに挑める面白さも経験できます。
お客様の想いに応え、ホテルなどの施設も手掛けています
当社はマンションが主力である一方で、社屋ビルやホテルなどのプロジェクトも手がけています。その代表例が、観光地として注目が集まる福岡・糸島にある、カフェ棟併設のリゾートホテルです。設計の仕様変更や予算調整も多く、現場では対応力が問われましたが、施主様の熱意に寄り添い、しっかり取り組ませていただきました。現場では想定外のことも起きますが、その都度対話を重ね、柔軟に対応していけるのは、成和建設の強みであると自負しています。どんな建物であれ、結果として「やってよかった」と思っていただけるよう、誠心誠意仕事にあたることを大切にしています。
客室棟は全室オーシャンビューでプライベートプールや薪ストーブ完備
カフェ棟は宿泊客専用ラウンジとして利用
受注の流れと交渉を支える“日頃の誠実さ”
受注の流れは、まずディベロッパーからの打診に始まります。お客様から“こういう建物を建てたい”というご相談を受けて、図面や土地情報をもとに、事業として成り立つかどうかを試算。収支が合えば、プロジェクトが動き出します。
その後は契約、着工へと進み、施工管理者が中心となって現場を動かしていきます。建設コストは年々変動しており、とくに近年は資材価格や人件費の高騰により、契約後に追加予算の相談を行うケースも出てきています。
交渉においては「うまく伝える言い方」以上に、「日頃からの仕事に対する姿勢」が大切なんですよ。とくに価格交渉は、最後の最後に「信頼」がものを言う場面。普段から誠実に仕事をしていれば、“あの会社が言うなら仕方ない”と受け入れてもらえることもあります。逆に、日頃から不誠実であれば、どんなに理屈を並べても通りません。
どれだけ正しい主張でも、受け入れてもらえるかどうかは関係性次第。だからこそ、日々の現場対応一つひとつが未来につながっていくのだと思います。
進化する福岡、求められる対応力
福岡市内の建設需要は、ここ数年でさらに増加しています。特にこの5年ほどは、マンション案件が非常に多いですね。ホテルの建設も増えましたが、人口の増加に伴って、住宅が圧倒的に不足している印象です。
案件が集中する一方で、現場では人手不足や資材価格の高騰といった課題も浮上しています。ライフスタイルやニーズの多様化に伴い、特に分譲マンションでは厳しい設計監理が行われるところも多いですが、各現場の監督、協力業者の方々は、よくやってくれていると思いますね。業界も働き方改革が進み、かなり変わってきているので、今後は若い監督たちが中心になって、次の時代の街づくりを進めて欲しいと願っています。
学生のみなさんへのメッセージ
建設の魅力は、やはり“形として残る”ことです。通りかかったときに“この建物は自分たちが建てたんだ”と言える。それは、ものづくりの醍醐味ですね。「福岡の街をつくる」という私たちの仕事には、大きな責任が伴いますが、そこにはやり遂げた人だけが味わえる醍醐味も存在しています。建設の仕事に少しでも興味がある方は、ぜひ現場に来て、空気を感じてほしいですね。目立たないかもしれませんが、社会の土台をつくる、誇れる仕事ですよ。