観光地やテーマパークのお土産菓子、「おいしい!これ、どこで作っているんだろう?」と気になったことはありませんか? 実は、有名ブランドの看板商品やご当地のお菓子でも、製造を別の企業が担当している場合があります。
この仕組みは『OEM』と呼ばれ、見えないところで企業が連携し、魅力的なお菓子が生み出されています。今回は「OEM」が担う役割や面白さについて、この分野で長年の経験を持つ企業の一つ、タンドール製菓株式会社の若尾達也社長にお話を伺いました。
【タンドール製菓株式会社】
「お菓子屋さんから頼りにされるお菓子屋さん」として、テーマパークや観光地の土産菓子、健康補助食品などを開発・製造する製菓会社。3つの工場では常時1000アイテム以上のお菓子を扱う。お客様のニーズに合わせたオリジナル商品の開発を強みとし、商品の企画・製造、パッケージングまで一貫対応。高品質な製造プロセスが評価され、国内外の有名メーカーとの取引実績も豊富。
※1991年、社名を若尾製菓株式会社から「タンドール製菓株式会社」に変更。若尾製菓株式会社は販売会社として事業継続。
代表取締役 若尾達也さん
二代目社長である父の背中を見て育ち、お菓子づくりの道を志す。東京製菓専門学校卒業、同業他社で3年間修業したのち、家業である若尾製菓株式会社(当時)に入社。営業として全国各地の土産菓子を提案・商品化し、自社および顧客企業の発展に貢献した。2014年、代表取締役に就任。
OEMって、なに?
OEMとは、“Original Equipment Manufacturer” の略で、
他社から仕事を受託し、その会社のブランド(製品)を製造するビジネスモデルです。請負った会社は、企画・設計から製造・パッケージングまで担当します。タンドール製菓はこれまでに多くの有名ブランドと提携し、テーマパークや全国の観光地に並ぶ土産菓子を中心に、日々さまざまな商品を生み出しています。
タンドール製菓がOEMを始めた背景
戦後の復興期、創業者の祖父が
「甘いものこそ人々の心を癒し、元気を与える」と考え、自ら栽培したさつまいもなどを活用してせんべいの製造を始めたことが始まりです。しかし、当時は大手メーカーの商品が圧倒的なシェアを占めており、規模の小さな自社が生き残るには独自の戦略が必要でした。そこで私の父が、観光地の名前をせんべいに焼き印し「土産菓子」として提案したところ注文が殺到。次第に東京や大阪にも取引先が増えていき、OEM事業が本格化していきました。
OEMの、おもな流れは?
タンドール製菓株式会社のOEM製造の流れは以下のようになっています。
すべてを一から企画・提案するのではなく、既存のお客様に対しては、すでにある商品をもとに新商品の提案をしたり、お客様から提示された仕様書で製造を行ったりすることもあります。
製造工程では、個包装やラッピングまで行い、完成品として納品します。
1 営業担当との打ち合わせ
製造するお菓子の種類、コンセプト、予算などを詳しくお伺いします。
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2 商品設計のご提案(約2週間)
商品の仕様設計や製造ラインを選定し、概算価格やスケジュールを提示します。
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3 試作品の製造(約1〜3ヶ月)
試作品を手作業で製造します。最終的に機械での再現・量産が可能かどうかを検討します。
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4 試作品の量産テスト(約2ヶ月)
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5 製造契約の締結(約2週間)
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6 本製造の開始(約2ヶ月)
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7 お菓子の納品
この流れは一例で、専用の設備を作るところから始まることもあります。型の製造から手掛けた大手企業のケースでは、商品化まで3年かかりました。既存のお菓子の味を変えるだけでも、最低半年はかかることがほとんどです。
企業がOEM製造を依頼する理由
一般的には、設備投資や生産管理のコスト削減、商品開発のスピードアップなどが挙げられます。自社内にノウハウがない、生産設備を持っていないという場合もありますが、新たな設備投資や人員の増員はリスクを抱えることになるため、よほどのことがない限り、大手企業でも内製化に踏み切ることはありません。自社ブランドの価値を守るため、信頼できるメーカーにOEM製造を委託するのが一般的です。
OEMのやりがいや面白さ
大手メーカーとのお取引では各社の仕様でお菓子をつくることが多く、さまざまなノウハウが自社に蓄積されていきます。製造ラインでも、原料や配合の違いで出来栄えがどう変わるのか体感できるなど、学びになることは多いようです。その点でタンドール製菓は、
OEMのお客様に育てていただいて今がある、と言えます。
あとは何と言っても、さまざまな顧客の要望を形にし、その商品が
“多くの人を笑顔にしている”と実感できた時の喜びは格別です。工場での作業が中心の社員はその実感を得る機会が少ないので、全社報告会では販売の様子を映像で紹介するなど、「今まさに、このように販売されています」「多くの方に喜んでいただいています」と、
現場の温度感を全社員に共有するよう努めています。
会社としての今後の展望
老舗のお菓子屋さんに新製品の提案をしたり、画期的なアイデアを持っているベンチャー企業の製造を請負ったり、テーマパーク向けのエンターテイメント性のあるお菓子を作ったり。
「こんなこと、できますか?」というご相談に「できますよ!やりましょう!」と言える会社であり続けたいと思っています。
また、自社ブランドの展開にも一層力を入れて、地元を盛り上げていきたいです。私たちのお菓子が多くの人に知られることで、全国で活躍している美濃加茂出身の人たちが、
自分の故郷を誇りに思えるようなお手伝いができたら嬉しいです。
学生さんへのメッセージ
「将来こうなりたい」という目標や「挑戦したいこと」があるなら、その思いを強く持って、社会人としての一歩を踏み出してください。困難に直面しても、その情熱があれば乗り越える糧になりますし、目指すものがあればこそ自分の成長も実感することができると思います。
我が社では、今年の春に入社した23名の新入社員のみなさんが、誰一人欠けることなく頑張ってくれています。タンドール製菓で働くすべての人が「この会社に入って良かった」と実感できる企業を目指し、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。ぜひ仲間に加わってくださいね!