「卓越したブランドとホスピタリティで 世界のお客様を魅了できる外食企業となる」をビジョンに、国内外で飲食店を展開する株式会社ワンダーテーブル。
今後に向けての事業方針や、採用活動方針、これから求められる人材について、取締役 小川圭介様にお話をお伺いしました。
ーーーーコロナウイルスの影響について。
影響はかなり大きいです。緊急事態宣言中は国の方針に従い、ほぼ全店休業していましたが、5月中旬以降からは営業を再開しています。郊外や地方都市は落ち込みが少なかったです。逆に都心部は落ち込みが大きく、特に山手線の内側はオフィス街のため、打撃が大きかったですね。業界全体で言うと、これまでの売上に対して都心では約5割、郊外だと約8割の売上になっています。
テレワークで家にいるので食事は家族と摂る。外食の回数が減り、さらに外食するなら家族と家の近くで、という傾向が。逆に8月あたりまでは、職場の近くでの外食がほぼ消滅という状況でした。
8月後半から、ニュースでも感染者数の低下が肯定されはじめ、そこから徐々に客足が戻り始めました。売上は1週間に約5%ずつ上がってきている状況。徐々に回復しています。
ーーーーこれからどのような事業展開を考えていますか。
色々ありますが、3つの点を中心に考えています。
1つ目は、テイクアウトとデリバリー。ステイホームの中で、新たな需要をどう掘り起こすかがカギですね。本来はファストフードが中心だったテイクアウトとデリバリーを、一般の飲食店も始めました。これが簡単そうでなかなか難しい。
2つ目は、安心・安全。人々は、初めての店にはなかなか行かなくなりました。ネットで見てこの店おしゃれだな、ではお店に行かなくなりました。逆に、地元で行ったことがある、知ってる人がいる、安心な環境だ、というのがお店に行く決め手になるようになりました。
3つ目は、同行者。今までは、外食といえばいろんな人と飲みに行ったり、食べたり。ランチ=ビジネスマンで、平日の夜には宴会需要がありました。しかしステイホームでメンバーは家族や親しい友だちが中心に。飲食業界のターゲットが一気に変わり、ファミリーやフレンドが中心になりました。PRの方向性も大きく変えていかないといけません。
ーーーー今までしてこなかった事をするのは大変ではなかったか?
やはり大変ですね。コンビニのお弁当って冷たいのが当たり前ですよね。冷たい状態でいかに美味しいか?が追求され、冷たくても美味しいように出来ているんです。しかし飲食店では、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、ということが重要。本来温かいものが冷たい状態でも美味しい、というのが今までの調理場の仕組みでは難しいんです。
衛生的にも、店舗では正しい手順で作り、目の前で食べてもらえば大丈夫でした。しかしデリバリーやテイクアウトでは、いつ食べるかはお客様次第なので、今まで通りではなく適宜変えていかないといけない。衛生の考え方も全く別物です。
美味しく作るだけではなくて、いかに安心安全なのかという科学的根拠が必要になり、調理法の概念を逆にするということも、4月から5月は取り組みました。
ーーーー今後の計画は?
飲食業界の売上が落ちているといえど、実は大手フライドチキン店は前年比120%の売上を記録しています。
そして、起きてしまったことはもう過去には戻りません。一度テイクアウトやデリバリーを経験した人は「これでもいいか」となります。少し高くなるけどデリバリーでもいいかな、と。一度経験すると、ニューノーマルが生まれ、そしてその需要が大きく上がって来ます。なのでファストフード店のように、テイクアウト・デリバリーを考えた上での商品開発が必要になります。これは多くのレストランが今までやってこなかった事です。
今後はどんな風に科学的に、ロジカルに変化出来るかが、飲食業界のポイントになると思います。
ーーーー休業期間中の従業員はどうでしたか?
がんばろうよ!というモードでしたね。緊急事態宣言で営業出来なくなったのは店内営業でした。なので、テイクアウト・デリバリーの営業を手分けしてやってみようよ!という方向になりました。とてもいい経験でしたね。若い子はフレッシュで良いですが、社会人30年目とかの人は、何が起こっているか分からなくてなかなか動けない部分もありました。
でも、これまではシェフは調理場で料理するのが仕事でしたが、少ない人数の中で、たまに「俺、デリバリー行くよ」と言ってくれたりしました。客単価が2万円くらいのお店でも同様でした。
デリバリー会社にお願いする他にも、お店にオーダーしてくれれば、直接持って行きますよ、という活動もしました。お客様の家にピンポンして、「〇〇のシェフです!お料理持ってきました!」と。売上が通常通りに上がらなくても、皆でトライ&エラーで前向きにやってみようよ、という空気でした。
会社によっては完全閉店で給料6割、という所もありますが、それはそれで大変だったろうな、と。家ですることがなくて、ニュースではコロナが大変だ、という内容が毎日流れていて、非常にネガティブになってしまった社員が多くいたというのを、休業した会社から多く聞きました。逆に老舗の高級店などは全く休業せず影響なしというお店もあったようです。良いか悪いかはさておき、そういうお店は立ち上がりがとても早かったと思います。営業していることによってお客様が切れない、従業員のモチベーションも高い、売上もありますし。会社によって、それぞれギャップがあったと思います。コロナにどう対応して運営するかはオーナーさんのジャッジですね。
ワンダーテーブルは出来ることを皆でやっていこうという方針で、お給料を下げることもなく、全員で乗り切りました。今まで長く一緒に頑張ってきた社員も多いので、出せるところまでは出そうという方針です。社長は「やせ我慢経営だよね…」と言いながらも、雇用を守ることを最優先にしてきました。
実はリーマンショックや東日本大震災でも大打撃を食らっていたので、経営のスタイルを変えていたんです。上場もやめ、膨らむ経営をやめていました。上場廃止後は75店舗あった店舗を少なくし、確実に利益率の良いものに寄せていく方針で経営。最初は75店舗26ブランドあったのが、今は50店舗12ブランドまで縮小しています。内部留保を高めた経営ですね。離職率も、大きく数字は上がりませんでした。
ーーーー20年卒採用は?
20卒は30名という、過去最大の新卒を採用しました。これによって、社員の10%以上が20年卒の新卒になりました。現状、経験者採用は完全にストップしていますが、新卒は会社の幹になるので、今後も切らさずに採用を続けたいと考えています。一度止めてしまうと、再構築に5年10年かかってしまいますしね。
新卒の数は今後も増やしたいと思っています。20年卒は4月に入社、リモートで勉強会などの研修を実施し、5月に入社式、その後店舗研修という形になりました。
ーーーー21年卒採用は?
新卒採用をストップしようという意見も役員から出ていましたが、かなりしつこく食い下がり、2021年度も数名を採用予定。本来だともう内定式まで終わっている時期ですが、かなり遅れている状態です。ですが、もう既に内定も出していて、12月頃に内定式の予定です。
21年卒のレベルを2〜3ヶ月分高く仕上げておいて、やっぱり新卒必要じゃない?という空気感を社内に作りたい。そしてそれを22年卒、23年卒の採用にも繋げていきたいと思っています。
ーーーー専門学校卒業生は?
半分ほどは専門学校卒ですね。代々先輩がいる学校もあって、先輩が活躍する姿を見て、入社したい!という方もいます。
ーーーー学生へのメッセージをお願いします。
本来なら5年、10年かかって変化するはずの事が、この状況下で1年足らずで起こってます。会社に行かない、家の周りで食事をするというパラダイムシフトや、ミーティングはオンラインで実施し、重要な面談だけ直接、というように変化が起こっています。
皆が変化を経験していますが、皆さんの10個上の先輩たちは変わりきれない、付いていけないところもあります。20年卒の新卒採用で驚いたことがあって、一度も会ってないのにオンラインでちゃんと課題や作品を作ってくるんですね。僕たちの年代だと、一度会って、飲まない?とかが無いとなかなか厳しいところもある。学生のリアル側に世の中が寄っていっていて、逆に皆さんにとって有利な状況になっていると思います。
ビジネスのモデルも変わっていて、ニューノーマルがノーマルになる世の中で、みなさんの強みが活かせる時代になっていくと思います。
これからは、人がいるレストラン、人がいないお腹を満たす所、と、飲食店が二分されてくる世界です。接客してくれる人がいて、シェフが目の前で作ってくれるというレストランの付加価値がどんどん上がって来ます。これが今後の大きな変化になり、逆にいうと、飲食業界はかなり価値のある業界になります。
アメリカのNYなんかでもそうですが、ただただ「ハンバーガー」で良かったものが、地産地消という意識が入り、「コト」を食べよう、という意識に変わっています。例えば、半径何Km以内で出来たものしか食べないとか、作っている人の顔が見れるものを食べる、だとか。「このために何を食べる」という意識への変化が起こっています。
コロナウイルスの流行で、そういった新しい意識が加速しています。日本においても、どうせ食べるなら意味のあるもの、どうせ食べるなら社会貢献できるものという意識へのスイッチが起こります。食という業界の価値、地位がステップアップしていく、というのがコロナの後の食業界のステップになると思います。
◆小川 圭介様プロフィール
1967年⽣まれ。最初に10年勤めた飲⾷企業では、都⼼だけでなく地⽅都市での経験を多く積み、地域⽂化に合った商いをするという、商売のいろはを経験。また、和⾷からイタリアン、南⽶料理まで、また、⼩さなバーからビル⼀棟の巨⼤クラブといった幅広いブランドの開業や運営に携り、ブランディングの基礎を学ぶ。その後、コンサルタントなどの放浪の旅的な仕事をし、2000年に(株)ワンダーテーブル⼊社。銀座にあったイタリアンの旗艦店の⽀配⼈を経て、スーパーバイザー、⼈事マネジャー、営業部⻑などを経験。2015年6月に取締役に就任する。根っからマラソンやトライアスロンが好きという訳ではないですが、⽬標を⽴ててコツコツと積み上げていくことが趣味です。