戦後の焼け野原であった1948年の神戸の街。「にしむら珈琲店」は、上海から引き揚げた創業者により、たった3つの小さなテーブルからスタートしました。ひとりの女主人の手からなる本格的な珈琲は当時とても珍しく、評判を呼んで店は徐々に軌道に乗りました。そこから情報も何もない時代にひとつひとつ生み出された様々な工夫は、どれも外食業が産業化を迎える以前の事。いずれもビジネスとしてではなく創業者が追求する「最高のおもてなし」の結果であり、それが現代に残る喫茶文化形成に繋がっていきます。更にはやがてトレードマークとなっていく厚口の有田焼のカップや、全国的に名を知られるきっかけにもなった灘の銘水「宮水」の使用、著名人が多数在籍した日本初の会員制喫茶店などにより、「神戸と言えばにしむら」と知られるようになりました。神戸の街に育まれた一杯の珈琲は、今も神戸っ子の日常に寄り添う存在です。