近年注目されている「ウェルビーイング」という言葉をご存知でしょうか?「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、広い意味では「幸福感」と訳されることもあります。
「建設業界×ウェルビーイング」
かつての建設業界では「重労働や長時間労働が当たり前」という風潮がありましたが、近年では従業員の身体的・精神的健康を重視し、労働環境を改善しようと取り組む企業が増えています。過度な仕事は働く人の健康を脅かすだけでなく、現場での事故や怪我のリスクを格段に高めることにもなりかねません。ウェルビーイングの概念を建設業の働き方に取り入れることは、
個人の健康・幸福感の向上だけでなく、業界全体が健全に発展していくための基盤を整えることにもつながります。
今回は30年前からこの視点に立ち、働きやすい職場環境づくりに取り組んできた【橋本建設株式会社】の事例を通して、建設業界の新しい働き方について紹介します。
【橋本建設株式会社】
大阪府豊中市に本社を置き、おもに大阪府や豊中市の土木工事を手掛ける建設会社。高い技術力と、残業なし・100%に近い有給取得率などの労働環境、若手・未経験者の育成力が強み。「健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)」、「健康宣言」企業認定、豊中SDGsパートナー。
【お話を伺った人】
新井正和社長
工業大学を卒業後、橋本建設へ入社し半世紀。趣味は家族旅行。
福田智史さん
中途入社で2011年に橋本建設へ入社。趣味はからあげづくり。
橋本建設が“ウェルビーイング経営”に踏み切った背景
新井社長:「橋本建設が
週休二日制を取り入れたのは今から30年前です。1994年に大企業で週40時間労働が義務付けられた際、いずれは中小企業も対象になるのだから、今のうちから準備をしておこうと導入を決めました。はじめは社員から『給料を減らされるのか』と、戸惑いや反発の声があがりましたが、私自身が何か月も休みがない働き方を経験してきたからこそ、これからの人たちには健康で長く働ける環境を用意したいと考えていました。その後、
“土曜日の出社は自由、出社した場合は休日手当をつける”など、社員の声には都度対応策を講じる中、少しずつ現在の働き方のスタイルが定着していきました」
ウェルビーイングな環境をつくるために取り組んでいることは?
新井社長:「公共工事の中でも工期が長く、高い利益率が見込める工事を受注できるよう努力しています。利益が確保できれば余裕を持った人員体制が可能になり、個々の仕事量に余裕が生まれます。急な欠員があっても、日頃は若手の指導にあたっているベテラン社員が対応するため、他の社員にしわ寄せがいくこともありません。そうして残った最終的な利益は社員に還元し、
同業他社にくらべて高い給与水準を維持しています。私が30代の頃は、同世代で年収1000万円を超える社員が何人もいました。それだけ労働量が多かったことも事実ですが、今は無理のない働き方をしながら、かつての給与水準を実現することを目標にしています。
整備後は働き方や社員の意識にどんな変化がありましたか?
新井社長:「まずは残業がなくなりました。17時になったら、私が率先して帰宅します。社員も定時で帰ることが常態化しているので、地域では
“17:15分には電気が消える会社” と評判です。有給休暇も取得しやすいよう、理由はすべて「私用」で良いと伝えており、
二週間休みを取って旅行に行った社員もいます。また社員達も“効率よく仕事して利益を上げよう”と、意識をもって仕事にあたるようになりました。自分達だけでなく、協力会社・作業員さんの利益や働き方にも配慮した現場管理を行ってくれています。
福田さん:「新入社員さんからはよく、
『残業がないって、本当だったんですね』とびっくりされます。一年目のボーナスの額が多いことにも驚くようですね。パソコンや安全靴などの備品は会社から支給されますし、カップラーメンやお菓子も食べ放題。現場事務所では作業員さん達にも飲み物やお菓子を用意していますし、
協力会社へ機械代や資材置き場の費用は請求せず、その分は人材の採用や育成予算に充てて下さいと伝えています。協力会社さんが無理なく、効率よく作業できる工程を組めば、次も気持ちよく働いてもらえる。作業員さんがいなければ仕事は成り立たないので、お互いがWIN-WINの関係を築けるよう最善を尽くしています」
最後に学生さんへのメッセージをお願いします !
国が掲げる国土強靭化計画により、インフラ整備や防災対策など、今後も土木の仕事がなくなることはありません。
橋本建設もこの先何十年にわたる工事の受注を見込んでいます。みなさんが安心して働き、良い生活や人生を築いていけるよう、これからも働きやすい職場環境づくりに努めていく所存です。もし、あなたが建設業界の働き方に不安を感じているのなら、一度私たちの会社を見に来て下さい。いつでもご連絡をお待ちしています。